特集にあたって

編集部

 厚生労働省の精神保健福祉資料(「630調査」)によると,2014年6月30日時点で身体拘束を受けていた患者は1万682人と報告されている。これは,同調査の2003年と比較すると,約2倍の数になっている。こうした背景には,精神科の救急病棟や急性期病棟の増加,認知症による入院患者の増加といったことが推測されるが,詳細な原因はわかっていない。
 こうした状況を前に精神科看護師は何を考えるべきか。まずは各病院での隔離・身体拘束の状況の真摯な見つめ直しが必要となろう。そこで今回の座談会では,登壇者と参加者が所属する病院における運用の状況と最小化に向けた具体的な工夫と現実的な困難さについて,前向きかつ率直に意見交換していただいた。また,隔離・身体拘束の適切な運用の要である医師(精神保健指定医)の立場から,隔離・身体拘束の諸課題についての整理と看護に期待する役割について述べられている。そして,具体的な取り組みとして,パーソン・センタード・ケアの理念に基づくケアを通じて認知症患者に対する行動制限の最小化に導いた実践と,組織一丸となった成功した行動制限の適正化を「いかに継続していくか」の視点からの実践を紹介している。
 隔離・身体拘束の現状から目を背けず,最小化に向け真剣に取り組むことが,今後の精神科医療の立ち位置を決めることになるだろう。