特集にあたって

編集部

 本特集は,多くの時間を患者とかかわり経験と知識を積み重ねてきたベテラン看護師についての特集です。また,その能力がいかにして後の世代に残され,組織化され,もって患者に還元されるか問うものでもあります。
 では,実際に臨床において,長い年月に渡り患者とかかわってきたベテラン看護師の経験と知識はどのように扱われているでしょうか? 精神科医療を取り巻く情勢はめまぐるしく,次から次へと新たな方法が現れてきます。それらに対応し,理解し,かつ関心をもちつづけるのには実に体力が必要です。いきおい,ベテランは「昔取った杵柄」にいくつかの部分で頼らざるを得なくなることもあります。人と人との関係性がモノをいう精神科看護においては,そうした「昔取った杵柄」が奏功する局面も多いことでしょう。しかし,それを冷ややかな眼で見る見方も,現実にはあることでしょう。一方,ベテラン看護師はといえば,モノ言えば唇寒し。ここには,世代間を流れる深くて長い河が横たわっています。
 こうした状況は,組織にとって,また何よりも優先される,「患者に対する質の高い医療・看護の提供」にとって有益な状況といえるでしょうか? 決してそうではないでしょう。本特集が,世代間を流れる深くて長い河を超え,ベテラン看護師の力を組織に再統合することで,より強いチームとして医療・看護を提供するための一助になれば幸いです。