特集にあたって

編集部

 服薬自己管理(の成功や継続)には,患者さんの服薬への納得,薬に対する本人への知識の提供と学び,自己管理にいたるまでの看護師によるセルフケア能力の査定など,精神科薬物療法看護の基本が詰まっています。しかし,服薬自己管理は形骸化しやすいものでもあります。たとえば医療者が患者による管理を諦めてしまい,気がつけばスタッフが預かるというケースです。
 そこで今回の特集では,服薬自己管理の見直しをテーマに,病棟の実践と訪問看護の「利用者の内服」に関する考え方・実践を紹介します。冒頭記事では,入院中の服薬自己管理と退院後に当事者がどのような生活をめざすのかを考えあわせたうえでの支援方法について解説していただきます。また,多職種がチームとして多角的に支援することより服薬自己管理を進めていった2事例や,訪問看護の立場から,当事者の「薬を飲みたくない」という自己決定に伴走し続け,信頼関係を構築し孤立を回避したケースや,薬を中心とした生活でなく,生活を中心とした服薬を続けるために必要な考え方と実践について,具体的かつていねいに紹介いただきます。
 今回さまざまな観点から日常的に行われている服薬自己管理の方法やありかたを見直していますが,共通して浮かび上がったのは当事者の声に寄り添い,関係性を構築しながら対象者の自主性・主体性を重んじ,生活を支えていく看護の基本姿勢でした。