特集にあたって

編集部

 【特集1】隔離・身体拘束は常にその是非が問われ厳しい目が向けられる。そのため,各病院においては隔離・身体拘束の実施に際し,その施行を適正なものにするためのさまざまな試みがなされるが,課題としてあるのが,「隔離・身体拘束のいたずらな長期化」という問題だ。行動制限は人が行うものである以上,〈解除の判断への自信のなさ〉〈解除後への漠然とした不安〉により解除の判断が遷延するということも臨床上では起こり得ることなのではないか。そこで特集①では「隔離・身体拘束を長引かせないための一手」と題し,隔離・身体拘束が長期化したケースに対してどのようなアプローチ・方略を経て解除までいたらしめたのか,各病院の取り組みを紹介する。
 【特集2】トラウマ・インフォームドケア(TIC)についてのもっとも簡単な説明は「トラウマについてよく知ったうえで対象者のケアを組み立て,療養環境を整備する」というもの。よくある誤解は,「TICが対象者のトラウマを治療する」というもの。TICはすでにあるトラウマそのものにはふれない。ならば,TICでは何をするのか。鍵となる概念は再トラウマ体験。過去のトラウマ的な出来事がなんらかの刺激によって回帰し,心身に不調を生じさせる。あるいは長期にわたって症状が安定しないあの患者には,知らず知らずのうちに再トラウマ体験が生じているのかもしれない。だとしたら,ケアはいかに構成されるべきか。TICは精神医療に別の視点をもたらす。