特集にあたって

編集部

 患者・家族のもつ価値観は多様であり,かれらをケアする看護師の価値観も多様である。とすれば,臨床においてただ1つの倫理的正しさを定めることは難しく,むしろ個々の価値観に端を発して倫理(観)に関するコミュニケーションを喚起させること,倫理的に気になる点についての話しあいを常態化させることが重視されるのではないか。ただ,そうした状態を自然に発生させることは難しく,なんらかの仕組みが必要となる。そこで本特集では,看護倫理をめぐるコミュニケーションの場をいかにしてデザインするか,各病院の取り組みを紹介する。
 冒頭の座談会では,看護師の言語化を促し,倫理的な感性を磨くために必要なかかわりや話しあいについて語っていただいた。2本目の記事では,行動制限の増加をコミュニケーションの連携を意識したかかわりで改善させた過程について,3本目の記事では,ツールを使って倫理的な葛藤を表出させ,それをカンファレンスで吟味する方法について解説していただいた。4本目の記事では,小児患者への対応でスタッフ間に倫理的な対立が生まれた際に,デブリーフィングをきっかけとして患者のために協働した事例について,最後の記事では,スタッフのコミュニケーションが活発に行われた倫理研修の構成や工夫について紹介していただいた。倫理的な疑問を抱えたままにせず,さまざまな形で発信・共有していくことが,倫理的問題の解決と態度の向上につながると考える。