特集にあたって

編集部

 患者/利用者の主体性の保障。この点への配慮の必要性は精神科医療・看護において長きにわたり語られ,“主体性の尊重”と銘打たれた実践が対象者に提供されている。こうした志向自体は今日的な精神科医療・看護としてめざされるべきであろうが,その内実に関してはいまだ諸課題を残しているだろう。その諸課題の源泉の1つは,(特に入院医療においては)患者/利用者が構造的に支援を“される”側にあるということと,かれらが「主体性」を発揮するという考え(を医療者が認めること)の両立の難しさにあるのではないか。こうした両立の難しさは特に臨床実践において看護展開上の難点として焦点化される。この難しさを真摯に受けとめ,それでも「患者/利用者の主体性の保障」という理念を看護実践として貫徹するには,「この実践は本当に対象者の主体を尊重したものなのか?」という不断の振り返りが求められるのだろう。
 今月号の特集で紹介するすべての記事の底流にあるのは,自分たちの実践への内省の姿勢である。内省は葛藤やためらいがつきまとうのであろうが,その葛藤やためらいにこそ看護師としての倫理性が宿るともいえる。今回の特集は基本的には対象者の主体性を保障した看護実践の紹介となるが,上記の内省(あるいは支援者としての倫理性)をも含む内容となる。ぜひ,みなさまの実践への参考にしていただければ幸いである。