特集にあたって

編集部

 精神的な支援が必要となる患者・利用者は,必ずしも精神科にだけいるわけでは決してない。看護が提供されるあらゆる領域においてこころのケアを必要とする局面にある患者がいる。しかし,精神科以外の領域の,(たとえば,実習以来精神科の経験のない)看護師にとって患者のこころのケアについて,いまだ苦手意識をもつ部分があるだろう。そうした苦手意識は患者にとっての不利益となる。直接的に表現すれば,「よくわからない患者」として必要・適切なケアが提供されないという場合もある。
 弊誌の読者の多くは精神科領域に属して働く看護師である。そうした方々に向けて「精神科以外で働く看護師の精神科看護」を紹介する意味は,「自分たちが普段患者に対して提供している看護には普遍性がある」というメッセージの提供にあると考える。また,上述のような「苦手意識」をもつ看護師に対する,精神科看護の専門家としてのコンサルテーションの方法についても紹介することで,精神科看護師として自分が発揮できる能力の幅の広さをあらためて考えていただくのもねらいの1つである。
 本特集では精神科以外で出会う患者――介護老人保健施設,身体科での発達障害の児へのケア,救命救急の現場など――の(精神科看護の実践者による)こころのケアの実践にスポットをあてることで,精神科看護の専門性について検討していく1つの導きの糸としたい。