特集にあたって

編集部

 看護者には薬物療法を開始,または変更された後,薬の効果や副作用についての十分な観察を行い,患者に起きた変化について医師に伝える能力が必要である。以上は「精神科看護ガイドライン2011(日本精神科看護協会)」の薬物療法看護に関する解説です。
 「十分な観察」「患者に起きた変化」。実は,この点を過不足なく押さえ記録を通じて共有していくことは,なかなか知識・経験が必要であり,経験を積んだ看護師も難しさを感じる点ではないでしょうか。精神科ビギナーの方々にとっては,なおさらのことです。
 精神科ビギナーにとって「十分な観察」を行い,「患者に起きた変化」についてとらえていくということを難しくさせている要因の1つには「これまで習ってきた教科書的な(副作用)の症状」と「臨床上,目のあたりにする患者さんの状態変化」を正しく結びつけて考えることの困難さがあるのではないでしょうか。そこには看護基礎教育段階における「薬物療法」に関する課題も見えかくれしているようです。
 そこで本特集では「向精神薬の副作用の観察方法」「チームで共有できる記録のつくり方」の基礎の基礎を押さえつつ,薬物療法に関して指導する立場にある人に向けた「教科書などで学んだことと,目の前で起きている患者さんの状態の変化を頭のなかで結びつけるには,どのような指導・教育が有効か」についても紹介していきたいと思います。