特集にあたって

編集部

 臨床において「衝動行為」と認識される,看護の展開を行き詰らせる事態がある。一口に「衝動行為」といってもさまざまな表現形態があるが,本特集で焦点をあてたいのは,さまざまな「衝動行為」として表現されたものの背景にある要因を,いかに多角的にとらえていくか,という点である。
 そうした観点から「衝動行為」をとらえていけるならば,「衝動行為」という事態への認識の仕方もおのずと変化するだろう。それは端的にいって,「面倒の多い患者・利用者さん」という視点からの脱却という変化である。さらにいえば,「衝動行為」を軸に,対象者を多角的にとらえることで,対象者が元来もつ能力や可能性への発見につながり,そこを起点に対象者がおのずからそうした「衝動行為」を減らすスキルの獲得を支援できるのではないか。
 逆にいえば,もしその視点を欠けば,「衝動行為」=「即解決が求められる『問題行動』」という図式は固定化され,その「問題」解決のための不適切な薬物療法や,場合によって隔離・身体的拘束という処置が選択されうることになる。
 本特集では,いくつかのケースの紹介を通じて,「衝動行為」の「背景にある要因を多角的にとらえる」観点の提供と,「衝動行為」を対象者みずからの力によって低減していくようになるための看護支援の方法について探る。