特集にあたって

編集部

 躁状態と抑うつ状態がくり返し現れる双極性障害。厚生労働省発表の2017(平成29)年患者調査によると,気分(感情)障害(躁うつ病を含む)の患者数は120万人を超え,増加の一途をたどっている。躁状態のときに感じる高揚感から,一転してうつ状態となる落差は,自殺率の高さにもつながるため,看護師,家族を含めた周囲の支援者には,適切な対応が求められる。
 しかし,患者がうつ状態のつらさから病院につながると,診断の確定が難しく,躁転へのリスクに対応できないまま10年以上が経過する場合もめずらしくはない。また,診断が確定し適切な治療を受けても,再発率が高いという問題もあり,患者や家族が疲れはててしまうこともある。
 双極性障害に向き合う患者,家族,支援者は,躁状態とうつ状態の荒波のなかで,どのように葛藤し,そして希望を見出しているのだろうか。今特集では,双極性障害に特化して活動を続けるNPO法人ノーチラス会にかかわる方々を軸にご執筆いただいた。双極性障害をめぐって当事者・家族が直面する「耐え難き痛み」「残酷で魅惑的(側面)」(ケイ・レッドフィールド ジャミソン/新曜社)をとおして,援助者たる看護師のあり方を検討したい。
 なお,ICD-11の公表に伴い現在,双極性障害の呼称の変更(双極症)が検討されているが,本特集では双極性障害と統一して記載している。