特集にあたって

編集部

 アディクションに関しては,精神科でも長らく治療として取り組まれてきた一方,自助グループの存在を考えると,脱医療モデルを内在する「異端の実践」との指摘もある。弊誌では,1998年8月号,2003年4月号(日本アディクション学会第1回学術大会特集),2008年10月号,2010年9月号と4回にわたり特集を組んでいる。
 近年では,ネット依存,ゲーム依存など依存対象の現代化は見られるものの,その根底にはこれまでと同様の対人関係への課題が存在すると見られる。また,自助グループに関しては,組織体としての問題や,メンバー同士の支え合いという課題などを乗り越えるため,援助システムとしてセルフヘルプ支援センターなども登場している。
 今回の特集では「ハームリダクション」という考え方を下敷きとし,病院・グループの現在の,主にアルコール依存症治療・看護について,これまでの治療・看護の方法の変遷をたどりつつ,現代における支援の枠組み・取り組みについて紹介している(ハームリダクションとは「精神作用性のある物質について必ずしもその使用量が減ることがなくても,その使用により生じる健康,社会,経済上の悪影響を減少させることを主たる目的とする政策・プログラムとその実践」という考え方:本文より)。