特集にあたって

編集部

 8050問題(80代の親が50代の子どもの生活を支え,結果として社会的に孤立状態に陥るという問題)――この言葉はメディアをとおし,ひきこもり問題を代表するワードとして周知されつつある。この問題への対策が急務であることに異論はない。だが一方で,悪質な一部の団体が,ひきこもり状態の長期化に苦悩する家族から,いわば力づくで当事者を引きはがし,自立支援施設へ連行するといった問題も生じている。
 2019年3月には,これまでひきこもりとして数えられなかった,40代以上でひきこもり状態にある人々が約61万人いることを内閣府が発表した。若年層とあわせると100万人以上の人々とその家族が苦しんでいることになる。この状況に対して,精神科病院はどのようにかかわり得るのか。
 本特集では,まず「ひきこもり支援の前線」として,「ひきこもり」をケアするための支援機関の紹介やケアの基礎・基本について解説する。そして,ひきこもり支援の核ともいうべき家族への支援の方法とともに,すでにメディアなどで本邦において広く知られている山口大学の山根俊恵先生によるひきこもり支援システム(山根モデル)について具体的な事例とともに紹介する。今後,ひきこもり支援に取り組もうと考える援助職にとって必須の内容となっている。