特集にあたって

編集部

 新型コロナウイルス感染症の世界的な流行の拡大に伴い,医療機関への負担は増している。その状況下にあって,医療体制を維持するため現場で働く職員たちの心理的負担は大きい。有効な治療薬,ワクチンがいまだ存在していない未知のウイルスに対して,感染対策物品の不足による心もとなさ,あらゆる情報が錯綜するメディアからの報道に影響され,「自分が感染するのでは?」「自分がほかの人にうつしてしまうのでは?」という不安や緊張感が高まる。抱えたストレスは,個人の日常生活にはもちろん,組織の円滑な業務遂行にとって支障となる。これは看護部以外の職員にもあてはまることだ。現在起きている問題は,新型コロナウイルス感染症の流行拡大以前から燻っていた諸問題が,非常事態において顕在化したものとも考えられる。職員のメンタルヘルスをケアすることは,長期的に未知のウイルスへ立ち向かうためにも喫緊の課題だ。
 本特集では,職員のメンタルヘルスを支援するための方策として,看護職者が行った取り組みの実例と,組織内の環境を改善するための方略を紹介した。また,座談会では訪問看護ステーションから生の声をお届けする。人との接触を極力避けるよう求められているなかで,本特集を通じて「孤立」を防ぐため,「つながり」の大切さがよりいっそう感じられる内容となった。困難に不安を感じているのはあなた1人ではない。仲間がいるということを感じてほしい。