特集にあたって

編集部

 弊誌の特集で「虐待」について取り上げるのは,はじめてのこと。虐待問題は,1つの機関のみの介入で解決できるものではない。そこには職種・他機関を超えた連携が欠かせない。そこで今回の特集では,虐待問題における精神科病院・精神科看護師の果たすことのできる役割について検討していきたい。
 まず巻頭記事では,虐待に関する基礎知識として,この十余年における虐待へのとらえ方の変遷や虐待のリスク要因と保護要因を概観する。その次に,精神科病院における虐待事案への支援の方法について,精神看護専門看護師(CNS)の立場から,事例をもとに解説する。ここでは,虐待事案に対応する精神科看護師の役割として,家族内力動の調整に焦点があてられている。また,訪問看護における虐待事案へのかかわりを紹介した記事では,目下課題となっている虐待にのみを注視するのではなく,虐待者・被虐待者の希望や望む生活のあり方に寄り添った包括的なかかわり(それが地域ケアの醍醐味でもある)の重要性が述べられている。特集最後の記事では「アディクションという視点からみる虐待」と題し,嗜癖の観点から虐待を考えることによって導かれる支援の方法について検討を試みている。
 2020年7月現在。新型コロナウイルスの脅威から逃れるため,多くの人の生活は閉じられたものとなっている。閉塞感はストレスを高じさせる。そのため,虐待事案へのさらなる注視が必要となってくるだろう。