特集にあたって

編集部

 「薬については担当医に聞いてください」
 患者から薬について尋ねられたとき,ついこのように答えてしまった経験はないだろうか。これは極端な例であるが,もしもそのような返答をされてしまえば,患者は看護師という身近で頼りにすべきところを失い,抱く不安ははかり知れない。薬物療法に対して看護師が苦手意識を抱いている場合,それを患者は敏感に察知する。
 患者にとって「向精神薬の服薬」は往々にして一大事であり,不安感を覚えることだろう。その不安をケアするためには,薬理や有害作用の知識をもっているだけでは事足りない。知識そのものが患者に安寧をもたらすのではなく,重要であるのは「薬物療法に関するベーシックな知識」が,「ケアとして出力される」ことだ。
 これを踏まえたうえで今回の特集では,まず冒頭記事で,当事者が薬物療法についてどのように感じ,看護師に何を求めているのか本音をうかがった。そして薬物療法へ納得感をもって向き合うためのケアの手段に続いて,不安の主な要因となる「副作用」をいかに見逃さず,重篤になる前に防ぐかを,コミュニケーションから探る方法と,発見のポイントを紹介する。さらには医師の視点から看護師に何ができるかを聞いた座談会も参考にしていただきたい。
 薬物を用いた治療においても,その効果を左右するのは人の気持ちということがよくわかる。基本に立ち戻るが,寄り添う,向き合う姿勢が大切になるのだ。