特集にあたって

編集部

 本特集「SOSの出し方教育の取り組み」の企画案は山形県立保健医療大学教授の安保寛明先生からいただいた。特集でもご執筆いただいている高橋聡美先生と安保先生のこの取り組みへの貢献は以前より存じあげていたが,その内実や文脈,意義については,はじめて知ることとなった。今回の特集はご両名の活動と,ご両名が深くかかわる山形県と天童市の若い世代への自殺対策の取り組みで構成されている。
 詳しくは内容を読んでいただきたいが,次の文章にははっとさせられた。「希死念慮のある人や自殺未遂の人を『精神科につなぐことがゴール』のような錯覚が社会のなかにあるのも事実だ。精神科につながったけど,解決できないことは多いし,人の生きづらさは向精神薬だけで改善するものでもない(高橋先生)」。また,子どもにSOSの出し方をどのように伝えるかについて「自分は好きなこととかがあるいい人であって,その,いい人である自分がつらい思いをしていたらもったいない。だから助けてもらうんだ。そう思って,誰かに“話を聞いて”と伝えるんです(安保先生)」。
 「SOSの出し方」について考えることは,いわば「人間同士のつながりが感じられる」安心な社会をどう構築していくかという検討につながる。本特集が,つながりの網の目の1つである精神科看護師としての役目について考える機会となれば幸いである。