特集にあたって

編集部

 精神科臨床における潜在的な医療事故リスクの局面は多種多様であり,対応には大きな労力が必要です。そこで重要なのが医療安全への取り組みを個々の医療スタッフへの能力だけに期待したり,責任に帰したりすることではなく,組織レベルで検討し,安全性を高めていくことではないでしょうか。そこで,今回の特集では精神科臨床における医療安全への取り組みについて,組織上の工夫や医療事故分析をご紹介します。
 冒頭記事では危険予知トレーニング(KYT)を取り入れ,スタッフの意識の変化を促し,事故防止の対策を実践した事例をご紹介いただきました。また,臨床で発生する頻度の高い転倒・転落事故防止の取り組みとして,患者が主体となり自分たちの手で作成する転倒予防マップ活用の事例,安定した地域生活の維持に欠かせない精神科デイケアにおける医療事故防止の取り組みを事例を通じて紹介しています。
 苦手意識をもつ方も多い医療事故分析に関して,Medical SAFERという手法を使った分析の流れについて解説いただきました。事故を人の問題でなくシステムの問題ととらえる視点の重要性が示唆されています。特集最後は,小児精神医療の現場におけるCVPPPを通じた暴力事故防止と分析の取り組みについてです。提供される医療の屋台骨となる医療安全。今回の特集がみなさまの職場の医療安全体制構築の一助になれば幸いです。