特集にあたって

編集部

 カンフォータブル・ケアは,「快の刺激」に着目したケア技術です。カンフォータブルとは英語で,「心地よいこと,快刺激」と訳されます。すなわち,カンフォータブル・ケアとは認知症者が心地よいと感じる刺激を提供することで,認知症周辺症状を軽減できるケア技術です。このように,カンフォータブル・ケアは認知症者に向けてつくられました。同時に,カンフォータブル・ケアは,多くの看護者が抱えている認知症ケアに対する不安を軽減するケア技術でもあります。そして,カンフォータブル・ケアを身につけると認知症者に陰性感情が生じにくくなり,看護者のモチベーションの向上や虐待防止につながります。
 冒頭の記事ではカンフォータブル・ケアを提唱している南さんが講師を務めた研修会をもとに,カンフォータブル・ケアの理論・技術のエッセンスと,参加者とのグループワークで生まれた臨床の場でカンフォータブル・ケアを活かす具体案を紹介しています。次の記事では,カンフォータブル・ケアを導入した病棟がどのように技術を定着させたのか,取り組みによる病棟の変化,導入を検討している病院に向けたアドバイスを解説していただきました。現代日本は高齢化社会が進行し,認知症者が年々増加しています。今後,誰もが認知症者になり得る時代を悲観せず安心して迎えられるために,本特集が看護者と認知症者の心地よい関係をつくる一助となれば幸いです。