特集にあたって

編集部

 ひとくちに「地域生活を送る」といっても,そこに含まれる要素は無数にあります。ただ生活を送る以上,考えておかなければならないのがお金のことです。特に看護師が患者の退院後を見据えてケアに取り組むならば,地域生活に必要な制度や生活費についての知識をある程度備えている必要があると考えます。
 そこで今回の特集では,「看護師は地域で暮らす当事者の経済面をどのようにサポートできるのか」という視点のもと,地域生活に必要な経済面の情報について,看護師,地域生活支援従事者,当事者の経験をもとにわかりやすく提供します。
 冒頭の記事では,精神がい者への経済面に関する支援が必要な理由について整理いただいています。それを踏まえ「自立支援医療」「障害年金・高額医療費」「就労関係」に関する事例を紹介いただきました。続く訪問看護における,「その人の望む生活スタイル」を尊重したかかわりを通じて,その人の(特に今回の事例は経済面での)力をそがず,むしろ引き出すかかわりを紹介していただいています。さらに社会福祉協議会で行う「日常生活支援事業」を通じた取り組みでは,入院中から退院を見すえた経済面における支援の必要性が示唆されています。特集の最後にはあるひと組の当事者夫婦の「生活のしかた」を紹介いただきました。これらの記事を通じて,病院・地域におけるケアがより具体的で実りあるものになれば幸いです。