特集にあたって

編集部

 小社では2018年に『カンフォータブル・ケアで変わる認知症看護(著:南 敦司)』を発刊いたしました。カンフォータブル・ケア(以下,CC)とは,「快」に着目した認知症ケアの技法です。本来CCは,認知症患者にかかわる「すべてのスタッフ(援助職以外も含む)」が実践できなければ,十分な効果は発揮されないというのが前提です。ようするに「組織全体」がCCを実装することが求められています。
 しかし,現実的に「組織全体」での実装を実現することほど難しいものはありません。とられる手段としてはボトムダウン的にCCを浸透させていく方法,トップダウン的に組織全体に降ろしていく方法などさまざま考えられますが,「CCへのハードルを下げ,とにかく試してもらう」ことで,まずは実践者の数を増やしていくことが肝要と考えられます。今回の特集ではCCの輪を広げるための各病院の試みや,新しい取り組みの根づきの構造を紹介しています。
 また,『カンフォータブル~』が発刊された2018年と現在の状況は大きく異なります。いうまでもなく新型コロナウイルス感染症の脅威です。カンフォータブル・ケアには『常に笑顔で対応する』という項目が最初にあります。マスク着用でのケアが事実上必須となる状況で,「笑顔」を伝える方法は難しい。コロナの時代のCCの「新しい考え方」についてのCC提唱者である南さんの冒頭記事は必見です。