特集にあたって

編集部

 臨床推論とは「症候から患者の診断をつけるまでの思考過程をいう。看護師は診断をつけるわけではないが,医師が行う臨床推論を看護師が用いることができれば,患者の病態を的確に把握し,緊急度や重症度の判断ができ,患者の状態に合ったタイムリーで的確な看護が提供できる(本文より)」をいいます。
 認知症のタイプは各種検査やCTやMRIによる画像所見から臨床診断を行うことになるわけですが,症状像は刻一刻と変化するため,「コレ」と定めることは容易ではないと思います。そうであるとすれば,看護のアプローチもその時点での症状をみてとり,臨床推論を行い,看護介入を修正する必要が出てきます。本特集では「ケアしながらの」臨床推論にもとづく,その患者の状態像に応じた最適な認知症ケアの方法について紹介します。
 冒頭では,あらためて認知症の分類やその鑑別,また認知症でみられるさまざまな症候についておさらいしていきます。続く3つの事例は,当初の診断にもとづいて看護アプローチを進めていった結果,なんらかの「看護の手ごたえのなさ」を感じることになり,臨床推論を行ったものです。臨床推論にもとづいてケアアプローチを調整し,看護を進めていくことで,本来働きかけるべき病態にたどりつき,効果的な看護を展開した事例をご参考いただければ幸いです。