特集にあたって

編集部

 医師は自身の知識や経験をもとに患者・利用者を見立て,薬効や副作用などを考えあわせ,処方を決定しています。他方,患者・利用者は自身の希望する生活スタイルと服薬とのバランスをはかりながら日々暮らしています。この両者の意図のバランスが崩れたとき――つまり医師の処方内容と,患者・利用者の望む生活に相違が生じたときに,双方の思いをくみ,状況を調整できるのが看護師だと思います。たとえば,患者・利用者の生活状況や思いを(直接的・間接的に)医師に伝えたり,逆に医師の処方の意図を患者・利用者に翻訳して伝えたりする作業がそれにあたるだろうと思います。
 本特集ではまず医師の一般的な処方決定プロセスについて紹介します。そして医師と患者・利用者の薬物療法における思いの差異について検討しながら,可能なる医師と看護師の薬物療法の協働についてみていきます。次に,薬物療法における薬の量の増減についての基礎知識を踏まえ,「医師の処方の意図を読み解く」方法を事例的に紹介していきます。座談会では,訪問看護師のみなさまに,いかにして利用者と医師の橋渡しとなれるか,その実践的な方法を語っていただきました。本特集が,「看護の観点からも積極的に薬物療法に関与していく」という姿勢を後押しし、医師と看護師の薬物療法におけるコミュニケーションが活性化していく一助となれば幸いです。