特集にあたって

編集部

 臨床での日常ではあまり意識されることのない,精神医療にまつわる関係法規。法を意識するということの重要性は法が厳正に定める内容それ自体への意識づけもさることながら,「法的な手続きへの意識づけ」もあるのだと思います。たとえば,隔離・身体的拘束に関する精神保健福祉法が定めているその適切な手続きへの理解は,行動制限の適正化につながると思われ,臨床実践を統制するものです。それは決して制限ではなく,看護の役割を明確にし,かつ看護師自身を守り,患者さんを守るものです。
 また法律は臨床実践のベースであり,その先には個々の局面では法律の理解・解釈だけでは解決し得ない倫理的諸課題が存在します。そうした倫理的諸課題に対して,看護はどのように向き合うか。本特集ではそのあり方も提示しています。その1つが臨床での日常の根幹をなす精神科看護技術の向上であるわけですが,看護技術さえ整っていれば倫理的であるかといえばそうでなく「医療,特に精神科医療のなかで倫理性を確保していくためには,それまで意思決定を妨げられてきた患者の心境や思考過程を理解したうえで,常に批判的に振り返ること」(本文より)が必要となるのです。
 本特集は精神医療・看護にまつわる関係法規を振り返り,その先にある倫理的課題について検討を加え,そこから導かれる看護の役割について検討したいと思います。