特集にあたって

編集部

 精神科看護における“武器”は言葉です。「患者さんの状態を損ねたらどうしよう」と躊躇して,声かけをしないのでは精神科看護は始まりません。ただ,患者さんにとって何が「よい言葉」となるのか,それは相手との関係性やタイミングが大いに影響します。つまり,どのような患者さんに対しても,どのようなタイミングでも適応できる「魔法の言葉」は精神科看護において存在しないのだと思います。そのため,言葉の“内容”だけが重要なのではなく,言葉を発する側(看護師側)の態度・スタンス(あえていえば形式)への思索が重要となるはずです。
 本特集ではまず精神科の利用者の,「届く言葉」「届かない言葉」の体験を4つ紹介しています。かかわりのなかで自然に生じる「届く」その瞬間を再体験してもらえたらと思います。続く記事では,看護のかかわりのなかで発せられた「言葉」がどのように患者さんへ届くのか,その背景にある「信頼関係」について検討しています。
 最後に,「患者さんとコミュニケーションをとることが苦手な学生」「患者さんと何を話したらいいかわからない看護師」に関して,教育的立場からどのような促しが効果的なのか。手取り足取り「ほら,いまのタイミングで患者さんとこんなことをしゃべってきなさい」と伝えることはその看護師の学びになるのか。ケアのより深いところにある「関心」と「届く言葉」について考えます。