特集にあたって

編集部

 認知症患者さんのケアにおいて,入浴・食事・排泄・口腔ケアなどへの拒否は日常的に起こる。そのたびに援助者は疲弊する。疲弊は次なるケアに悪影響を及ぼし,患者さんのさらなる拒否を招くことになる。ならばいったん気持ちを整理し,「なぜこの人は援助に対して拒否を示すのだろう」と拒否の背景に目を向ける必要がある。そこには認知機能の低下が関連しているのかもしれない。あるいは病前の生活パターンと提供されるケアの内容に齟齬があるか,そもそものパーソナリティが関連しているのかもしれない。本特集は「ケアへの拒否を招くもの」と題し,その拒否の背景にあるものを探り,推論した先にある,より適切なかかわりの方法を見出すヒントを提示したい。
 冒頭座談会では,認知症の原因疾患から「拒否」の理由と,そこから導かれる妥当な介入方法について検討を行った。そして,認知症看護は「周辺症状にまみれた生活から離脱させることが大目標である」という観点からカンフォータブル・ケアの実装のために個人/管理者でするべきことについて紹介する。最後の座談会では,「うまくいかなかった事例」を率直に語ってもらった。結局のところ日々手探りで行う試行錯誤,その専心の姿勢こそが,認知症患者さんにとっての「心地よい=カンフォータブル」な空間をつくりだすのだ。