特集にあたって

編集部

 本特集では,実際に臨床で実践した看護師の臨床体験を記述する。具体的に実践へ適用できることを強調し,わが国の精神科臨床に活かすことをねらいとして企画した。本知見が,臨床看護師のヒントに,看護学生の学びの助けに,看護教育者の教育の補助に,学生や看護研究者が研究に取り組む素材になることをめざしている。
 冒頭記事では,トラウマインフォームドケアをさまざまな理論との関係から考え,その射程の広さをしめす。また,この考え方の浸透を進めている東京女子医科大学附属八千代医療センターの取り組みについて看護部長と精神看護専門看護師から紹介していただく。
 トラウマインフォームドケアの浸透においては学生時代からの親しみも重要である。続く2つの記事では,基礎看護教育におけるトラウマインフォームドケアの教授・教育方法についての実践を書いていただいた。最後の記事では,「トラウマインフォームドケアが変えたものは」と題し,この考え方にもとづいた複数の実践について,トラウマインフォームドケアの視点から分析する。
 トラウマインフォームドケアは個別ケアの場面での「膠着」に限らず,組織の「膠着」をも抜本的に見直す枠組みである。そしてそれは,個人・組織の背景にあるかもしれないトラウマに思いをいたらせることからスタートする。