特集にあたって

編集部

 2021年,特集冒頭の座談会に参加いただいたみなさまを編著者に迎え『精神に病をもつ人の看取り その人らしさを支える手がかり』を小社より刊行いたしました。本書は,精神科病院に長期入院となった患者の最期のケア―看取りの理想的なあり方を模索した1冊です。ただ,(座談会で言及されているとおり)「看取りの理想的なあり方」は当然のことながら極めて個別性の高いものであり,マニュアルとして提示することはできません。だとすると,どのような観点を精神科における看取りの軸とするか。
 「こんなふうにいきたい」をどう支援するか。これは本書の帯文です。その道筋は,「生きたい」「逝きたい」を支援すること,もっといえば,臨床において患者さんの意思や,その決定を支えていくことを通じて見出されるものだと思います。
 冒頭の座談会では,キーワードとして,患者の意思決定(意思形成・意思表出も含む)支援と,その実現に向けた患者・スタッフ双方の心理的安全性の確立の重要性が語られています。また,望む最期を患者・スタッフで共有するにあたって,各々が「死」にどのような思いを抱いているか,その価値観をめぐる対話が欠かせません。本特集では「死」をいかにテーマ化するかという視点も盛り込みました。「小さい一歩かもしれないけど,いまからできること」について考えていければと思います。