特集にあたって

編集部

 包括的暴力防止プログラム(以下,CVPPP)は,2016(平成28)年から厚生労働省「精神科医療体制確保研修」に取り入れられ,活動が徐々に広がっている。しかしその過程において,CVPPPの理念が置き去りにされていないかという懸念から,「精神科領域で当事者と共に安心の場を創る改良型包括的暴力防止プログラムの作成〈科学研究費基盤研究(C)〉」として新しいCVPPPをつくりだす試みがなされている。
 本特集においては冒頭に,新しいプログラムを作成するにいたった過程とめざすところを紹介する。そして,臨床の現場において暴力に類する経験をもちながらもCVPPPの実践を行っている方々から,理念の理解と,CVPPPの実践に際して日ごろから心がけていることを紹介していただいた。自分のなかにある攻撃性への気づき,被暴力体験からの葛藤,過去の事故による職場全体にただよう緊張感などは身に覚えのある方も多いだろう。また,【対談】では「対等性」という言葉をキーポイントとして,「当事者と共に創る」ことについての意義を探った。
 CVPPPはテクニックを身につけることではなく,「どうあるべきか」を考えなくてはいけないという(p.005)。日々業務に追われている方も,本特集を読まれた後にほんの少しだけ立ちどまって,「ケア」についてあらためて考えるきっかけにしていただきたい。