特集にあたって

編集部

 「発達障害」という言葉が社会に普及して久しく,特に精神科であれば実際に発達障害をもつ人とかかわる機会は増しているだろう。そうした社会の動きに伴い発達障害をもつ人へのかかわり方などを説明したマニュアルや書籍が刊行されるようになったが,それでも「発達障害をもつ患者への看護がうまくいかない」「難しい」という声が届く。支援者は実際の支援のなかでどのような部分に困難感を抱いているのだろうか?
 そこで,発達障害をもつ人への支援に携わる方から具体的にどのような考えのもとに支援を行っているのかをそれぞれお教えいただいた。冒頭記事では,発達障害をもつ小児の患者への支援を行いながら,いままで不全感を抱いていた理由への気づき,患者をとらえる視点と支援の考え方の変化を振り返っていただいた。患者とまっすぐ向き合う姿勢をご覧いただきたい。次の記事では養育者を対象とした「ペアレント・トレーニング」の基本をあらためて解説していただきながら,「看護師ができることは何か」を別の切り口から考えたものとなっている。続いて訪問看護の現場における実際のかかわりをとおして,発達障害をもつ人への支援の考え方についてご紹介いただいた。
 いずれも共通していたのは,「焦らない」「待つ」という姿勢であった。「どうにかしなければ」と思う気持ちが,本特集を読むことで少しでも軽くなるように願っている。