特集にあたって

編集部

 精神科病院に入院していた大畠一也さん(当時40歳)が身体拘束を受けて肺動脈血栓塞栓症を発症し,その後死亡したことを巡って争われた裁判では,身体拘束は違法と判断した2審の判決が最高裁にて確定した。この裁判は,国内外の多くのメディアで取り上げられた。本特集ではまずこの裁判に深くかかわる長谷川利夫氏(杏林大学)との対話を通じて,隔離・身体拘束を限りなくゼロにする方略を検討する。この座談会で冒頭にて長谷川氏より述べられている「精神科医療における諸問題をオープンに話しあう,あらたなステージに来ていると感じています」との言葉をどう受け止めるか。
 もう1つの座談会では,行動制限最小化に向けて「いま」できることについて意見交換をしていただいた。行動制限にかかわる課題を一気に解決するような手立てはなく,座談会での発言にもあるように,結局はシンプルなところに立ち戻るのだろう。つまり「患者さんはどのような人か時間をとって話をしてみる」,そのことから常にスタートするべきなのだろう。
 最後は,認知症治療病棟における身体拘束ゼロまでの道筋を,当該病棟の看護師長と看護部長に振り返っていただいた。この取り組みの成功の背景要因は何か。そこには強いリーダーシップや「患者さん本位」という病院の文化的ベース,そして諦めない強い信念があった。