特集にあたって

編集部

 かねてより女性のメンタルヘルスに関する諸問題への対応は重要視されているが,コロナ禍で女性の自殺率が上昇するなど,問題の切迫性が社会全体へ露見した。現代社会には,各種の暴力被害,ままならない就業,貧困……さまざまな経験に傷つき,支援制度の狭間を漂う女性がいる。それでも彼女たちがやっとの思いで病院に現れたとき,看護師は何をすることができるのか。
 冒頭記事では,メンタルヘルスに問題を抱えていながら,なぜ周囲に助けを求められず孤立してしまうのか,インターネットが普及した結果による社会的背景,トラウマなどの医学的背景について多角的な視点から解説をいただいた。2つ目の記事では,性暴力被害に対する具体的な支援に関して,SANE(性暴力被害者支援看護職)とワンストップ支援センターの取り組みなど詳細をご紹介いただいた。最後に,思春期女子病棟での経験を語り,振り返りながら,こころに傷を負った人に対する実地に則した看護のあり方を検討するという試みを行った。
 こころの傷のために助けを求める人がいたとして,その人のありのままの姿を受けとめ,自分自身のものさしではからずにいることは,感情をもった人間である以上は簡単なことではない。しかし相手がもつ背景を知り,自分の感情も理解していくことで,相手が何を求めているのか,自分はどうするべきかの道筋が見えてくるはずだ。