特集にあたって

編集部

 「ヤングケアラー」という言葉への認知が社会一般に広がっている。厚生労働省においても多くの検討会が開催されており,「ヤングケアラーの実態に関する調査研究」が実施されるなど,国としてヤングケアラーへの支援に着目していることがわかる。しかし,現時点で支援体制については完全に整備されているといえないのが実情だ。本号特集は,今後のヤングケアラーへの支援について考えるための特集である。
 冒頭記事では支援制度の現状と,支援をつなぎあわせながらも家族を孤立させないことが重要であると述べている。続く2つの記事は,ヤングケアラーはもちろん,精神疾患をもつ親の傷つきも忘れてはならないという提言である。また,かつて「ケアラー」であった方から,ケアをしていたときに抱いた思いと成人してからも続く影響,さらに自身の体験をもとに行われている取り組みを紹介していただいた。
 新しい言葉が普及していく過程では,表面的な部分のみすくいとられてしまうことがある。「ヤングケアラーはかわいそう」「親が悪い」という言葉もよく聞かれるが,解釈を押しつけることなく,また,親か子どもかどちらか一方の視点に偏るのでもなく,両者の気持ちをていねいに聞く必要があると思われる。両者の気持ち,望みを知ったうえで,どうするべきかと一緒に考えていく姿勢こそが大切になってくるのではないだろうか。