特集にあたって

編集部

 認知症の人の家族は,本人の心理症状や異常行動の理解ができず,混乱したり,その行動への反応を起こす。そのため,家族の心理的負荷の軽減を行う必要がある。そこで特集の冒頭記事では「家族のたどる心理的ステップ」という観点をとおして,認知症の人の家族への支援の1例を紹介する。現実の臨床では「心理的ステップ」はそれぞれの段階を行きつ戻りするため,その時々の適切なアセスメントが重要である。
 次の記事では,認知症ケアにおける家族支援を包括的に眺め,理念だけでは追いつかない(認知症)家族支援の現状を整理し,多職種協働による家族支援での看護師の役割について検討する。
 精神科訪問看護における認知症家族への看護を紹介する稿では,母親の介護と死別を経験した訪問看護の利用者への看護の1例を紹介する。母親を介護する役割を失った利用者の喪失感に寄り添いながら,利用者のその後の人生のなかで「楽しみを一緒に見つける」という支援は今後の地域における訪問看護の役割の一端を示すものだろう。
最後に紹介するこころのホスピタル町田の認知症ケアについての稿は,「精神科病院での認知症ケア」の“全力”がうかがえる。認知症の当事者が「いまこの瞬間の快」を感じられる空間づくりこそが,さまざまな感情をいだく家族の支援にもつながることを納得させられる。