特集にあたって

編集部

 「マルトリートメント(maltreatment)」とは「不適切なかかわり」と訳され,養育の状況下で子どもの発達に対して悪影響を与えるようなかかわりをさす。マルトリートメントを経験すると,後年に心身の不調をきたす確率が高くなるといわれており,いかにマルトリートメントと呼ばれるようなかかわりをなくしていくかが課題となる。しかし,子どもにかかわる親,周囲の大人も完璧な存在ではない。子育てのしづらさが指摘され,体罰や暴力を肯定する文化が潜む現代日本社会において,どうすれば問題を克服することができるのだろうか。
 本特集では,はじめに「児童虐待」「マルトリートメント」の定義とその言葉が生まれた背景について整理する。続く記事では,いま子育て中の親を「加害者」にしないため,支援者が抱きやすい処罰感情について知り,「ほどよい支援」の大切さを述べている。そして,すでにマルトリートメントが発生してしまった場合,その後,被害者に対してトラウマインフォームドケアの観点から支援する重要性と,脱暴力支援による加害者の変容可能性についても検討した。
 マルトリートメントはたしかにおそろしい。ただ,すべての人間には「レジリエンス」,つまり問題を乗り越える力が備わっているのだという考えが本特集の前提となっている。支援者は当事者の「レジリエンス」をひきだすサポートができるはずだ。