特集にあたって

編集部

 本特集のサブタイトルである,「『厳しい目』が『柔らかい目』へ」という言葉は,特集でもご執筆いただいた市川正典氏から頂戴した言葉です。この言葉の基本的な発想は「目(視線)は,かなりのストレス源になり得ることを肝に銘ずること」にあります。
 多飲水・水中毒のケアにおいて「管理からの脱却」がいわれて久しいですが,臨床では変わらず常にこの問題は残り,患者さんはもとより援助者にも疲弊をもたらしているようです。病棟運営において管理的であることは原則でありつつ,同時にさまざまな問題を出来させる持病のようなものでもあります。
 この二律背反が病棟看護の現実の様相であることは踏まえつつ,しかしそれでも,患者さんのリカバリーに向けてできることとは何か,あるいは新たにもつべき支援の発想とはいかなるものかを弛まず思考し続けることが,いま臨床で求められるのではないでしょうか。
 そういった意味で,多飲水・水中毒の(より適切な)ケアの模索というものは,「いかに精神科看護があるべきかを考えること」とほぼ同意なのではないかと考えます。多飲水・水中毒のケアについて扱った本特集のなかで紹介している実践・知見が「管理からの脱却」というシフトチェンジの前に立ち,“よりよりケア”を探求しているみなさまの助けになれば幸いです。