特集にあたって

編集部

 ディエスカレーションについて「単純に鎮静を図ることではない。協働的関係をつくり,指示したり強制するのではなく,協働し交渉して問題解決や環境調整など行うことで,危機を回避するというあらゆる方略を含む」としています(下里・木下,中央法規出版,2019)。
 対象者が興奮・衝動を示したときには,緊急の対応を要します。しかし,その対応の方法は薬物療法や行動制限だけなのでしょうか。対象者本人・スタッフにとって安心・安全な別のディエスカレーションの方法(精神科看護の技法)はないものでしょうか。本特集では,こうした点について具体的な方法や“別の考え方”を提案しております。
 まず,ディエスカレーションの前の状況(プレエスカレーション)への対処として,対人相互作用を紐解くという観点から対人円環モデルの可能性について検討しています。続けて,ディエスカレーションの局面が対象者にとって自己対処方法を学ぶための機会となるような看護について検討を行いました。またトラウマという観点から,興奮状態・衝動的な反応への対応予防的な対策としての「Declaration of Peace(平和の宣言)」「Engagement Round(エンゲイジメントラウンド)」の可能性について触れ,そして座談会2では,興奮・衝動性への対応をトラウマインフォームドケアの観点から振り返っていただきました。