世間でいわれる「親亡き後」問題とは,障害をもつ子どもや支援が必要な子どもをもつ親が亡くなった後に予想される困難な事態をさします。現状,在宅の精神障がい者の72.0%は親・きょうだい,配偶者と同居しています(厚生労働省,2018)。2020(令和2)年の数値でみると,外来患者総数586.1万人のうち45歳以上では約375万人となっています。超高齢社会の日本における喫緊の課題といっていいでしょう。
本特集では「親亡き後」に浮上する問題に,そのときになって慌てて対応するのではなく,いまからの準備が「親亡き後」を“問題化”させないという観点で,精神科看護師の役割・可能な支援について紹介します。
冒頭座談会では,精神科訪問看護において「親亡き後」問題に関する相談を受けたときに,どのような対応ができるのか。現在進行中の4つのケースをもとに検討しました。続くご本人の体験手記では,母親と主治医との別れにおいて,当事者は何を考え,どのように行動したのかを振り返っていただきました。対談では,家族会の高齢化がいわれる昨今における家族会の現状と「親亡き後」問題における家族の立場から見た,求められる支援の形をお聞きしました。最後に,土屋徹さん登場。「親亡き後」問題が“問題”にならないための,土屋流のいまからできる支援者の取り組みとは。「親はいつまでも『親バカ』でいい」とは?。
