特集にあたって

編集部

 精神障がい者の地域移行支援が盛んに言われるなか,精神疾患に対する偏見によるスティグマの問題はいまだ強く残っています。社会構造的なパブリック・スティグマ(公衆スティグマ)と同時に,精神障害をもつ人自身が「セルフスティグマ」を負っていること,それがリカバリーを阻害していることもあります。なぜ,セルフスティグマを負ってしまうような環境が形成されてしまうのでしょうか。その原因の1つとして,医療者とのかかわりから生じていることは否定できない事実です。
 本特集では,冒頭に当事者の方と援助職の方との座談会の様子を記事としてまとめました。かかわりを通じたセルフスティグマの強化を回避するための方法を,それぞれの実体験にもとづき,探ります。次の記事ではスティグマを生まれる背景を文化の側面から解説していただきました。そして,看護の現場のなかでセルフスティグマを緩和するための実践を具体的な事例から紹介しております。最後に精神科医療のなかでの公平・対等性についてご一考いただいています。
 スティグマの問題について考えるうえでは,あたりまえだと思い込んでいたことから再考していく必要があります。本特集をとおして,あたりまえだと考えていたことがあたりまえではなかったことに気づく,その端緒となればと思います。