本号の特集では,臨床に広くいきわたっているクライシスプランについて取り上げる。冒頭座談会①では,クライシスプラン(主にはCP-J)の「押し入れにしまった説明書」にしないための活用について(失敗談を含めて)議論をしていただいた。利用者主体の「共同意思決定」と「セルフモニタリング」の重要性,退院後の活用促進には個別性尊重と関係構築が不可欠で,多職種連携ツールとしての有効性も示された。単なるチェックリスト化を避け,利用者の「その人らしい生活」を支える計画作成についても考えていく。
続く記事では,本人の権利擁護と意思決定を支える「自分らしさを守るための計画」としてのクライシスプラン,「つくって終わり」の課題を乗り越え,共同意思決定と継続的対話で「生きた計画」にするための方策について検討している。
当事者・支援者による座談会②で議論の中心となったのは,クライシスプランが当事者自身の「調子のいいときの自分」を知る人がいることで,真に機能するということ。増川氏の体験談は,プランが「命綱」となり,世界への信頼を育む力をもつことを示している。歴史的に見ても,クライシスプランはピア(当事者)の文化から生まれたもの。つまり,自分を守るための事前指示書として当事者の権利擁護が起点となっている。
