特集にあたって

編集部

 2023(令和5)年は児童虐待件数が過去最多になったと報道された年でもあり,同時にこども家庭庁が発足された年です。これまでも国をあげて子どもや若者に関する施策を行って取り組んできたものの,少子化,児童虐待,不登校,いじめ,自殺など,諸問題はより深刻化しています。いま,現代を生きる子どもに立ちふさがる困難は,彼らのメンタルヘルスに影響を及ぼしているのでしょうか。また,それに対して精神医療はどのようにかかわることができるのでしょうか。本特集は,子どものメンタルヘルスに関する現状の把握と問題点の整理から行ったものです。
 現在,あらためて国として子どもの周辺環境,権利を保障する取り組みを推進していくにあたり,「こどもまんなか社会」をスローガンに掲げ,社会が動き出しています。【概観】でそうした動きについての予備知識を踏まえて,続く記事では「こどもまんなか社会」を実現するうえでの具体的な支援についてお教えいただきました。3つ目の記事では,ACE(逆境的小児期体験)についての基本的な知識とケアの要点を解説。次に,児童心理治療院での言葉で表現できない痛みを身体で訴える子どもたちについてご執筆いただきました。最後に社会的養護経験者とはどのような存在か,そして医療と福祉の連携の可能性について言及しています。