特集にあたって

編集部

 アンコンシャス・バイアス(unconscious bias),つまり無意識の思い込み。こうした物事をとらえるうえでのバイアス(偏り)は,これまで生活してきた環境によって培われた「常識」や「価値観」として深く深く,それこそ無意識レベルにまで,その人の内面に根づいているものです。ですから,アンコンシャス・バイアスは人にとって不可避なものでありますし,軽々に「悪意」というべきものでもありません。ただし,「人をみる」その見方が後々提供されるケアの質に影響を及ぼす看護という仕事においていうならば,こうしたアンコンシャス・バイアスには意識的である必要があると思います。
 冒頭記事ではアンコンシャス・バイアスが「患者の安全や治療方針の決定に影響を与える可能性がある」ことを鑑み,アンコンシャス・バイアスに気づくことの重要性について,いくつかの看護理論と事例を参照しつつ検討していきます。次の記事はアンコンシャス・バイアスと看護記録についてです。自分の“見方の癖”に気づき,評価的な表現を具体的な観察事実へと言い換える姿勢が大切なことを共有したいと思います。最後の記事は「『困った人』から『困っている人』へ―気づきが導く支援の転換」と題されていますが,このタイトルがまさにアンコンシャス・バイアスへの気づきが看護という仕事に与える好影響を如実に表現しています。