特集にあたって

編集部

 「モヤモヤ」の種はそのままにしておくと,いびつな形で芽を出します。だから発芽してしまう前に,胸の内にある感情を見定めて,それを言葉にして伝える。これを定式化したのが「異和感の対自化と投げ返し」というすばらしい技法ですが,これを十全に駆使するためにはトレーニングが必要です。それに,現実的にはがんじがらめの人間関係のなかで,己のネガティブな感情を表現するのは,けっこうな勇気もいります。だから,「言わぬが花」と心に蓋をして,やりすごすのが吉,そんな諦めにも似た思いを抱いている人もいるでしょう。しかし,「モヤモヤ」の種はそのままにしておくと,いびつな形で芽を出します。だから発芽してしまう前に……と論旨は無限のループにはまり込むわけですが,いずれにしても本特集のテーマは「伝えづらい感情を適切に伝え合う」です。
 「適切に伝え合う」ためには,伝える側・伝えられる側の,そしてそのコミュニケーションが生じているその場をひっくるめた「安全さ(心理的安全性)」が欠かせないことはいうまでもありません。特集でも触れられているように,「ネガティブな感情は決して悪いものではなく,ポジティブな思考や環境をつくっていく過程」です。そうして開かれる新しい関係性や環境があるはずです。勇気をもって自身の感情を伝え合う。まずはそこから始めてみてはどうでしょうか。