特集にあたって

編集部

 精神科看護は身体的な処置と同時に,言葉にならない思いに寄り添う,あるいは沈黙を共有するといったかかわりを含むものであり,目に見える成果やマニュアル化が難しいため,「技術」として実感しにくい側面があります。しかし,相手の反応を見極めながらともに対話の意味をつくり出すプロセスこそ,もっとも精練された専門技術にほかなりません。
 本特集『自己理解・他者理解が深まるコミュニケーション&カウンセリング』では,精神科看護の本質である「人間対人間の関係づくり」を掘り下げます。コミュニケーションを単なるテクニックとしてではなく,自己と他者の存在を深く認識するための「専門的援助技術」として再定義します。
 特集冒頭ではトラベルビーの人間対人間の関係理論を軸に,ペーシングや傾聴といったカウンセリング的技法を,いかにして臨床の「熟練の技」へと昇華させるかを考察します。また,学生や若手が抱きがちな「精神科では看護技術が身につかない」という誤解を解き,日々の何気ないあいさつや寄り添いがいかに治療的な意味をもつのかを,具体的なエピソードを交えて解説します。相手を理解するためには,まず自分自身を深く知ること。読者のみなさまにとって,本特集が精神科看護の奥深い魅力とよろこびを再発見する一助となれば幸いです。