特集にあたって

編集部

 「どうしても外せない」「事故が起きたらどうする」――身体的拘束をめぐる現場の声には,患者を守りたいという切実な思いがにじんでいます。その葛藤は,決して後ろ向きなものではありません。むしろ,真剣に患者と向き合っているからこそ生まれる誠実な問いかけではないでしょうか。令和8年度診療報酬改定により,身体的拘束の適正化はより強く求められるようになりました。しかし本特集が問いかけたいのは,制度への対応だけではありません。「患者の安全と尊厳をどうすれば同時に守れるか」という,看護の本質そのものです。
 まず「どうなったら解除できるのか」を問い続ける急性期病棟の実践,看護記録を多職種協働のプレゼンテーションシートとして活用する取り組み,そして「絶対に無理」という声が「まず代替策を考える」文化へと変わっていった病院の歩みを紹介します。さらに,トラウマインフォームドケアにおける「10のガイダンス」をもとにした実践を振り返る記事,最後に問題解決型の看護からウェルネス視点へと転換する考え方を紹介しています。どの現場にも共通しているのは,「1人で抱え込まない」という姿勢です。チームで悩み,試み,小さな成功体験を積み重ねていくこと。その積み重ねが,拘束に頼らないケアへのたしかな道を拓いてきました。難しいからこそ,一緒に考えましょう。その一手は,きっとあります。