特集にあたって

編集部

 精神科医療の現場において,高齢患者への支援は日常の風景となっています。しかし,認知機能の低下や精神症状の波,向精神薬の影響が重なるなかで,重篤な身体疾患が「見えにくさ」に阻まれ,発見が遅れるリスクと常に隣り合わせです。
 本特集では,高齢者特有の「非定型症状」に焦点をあて,精神科看護だからこそ求められるアセスメントと実践の視点を掘り下げます。高齢者の身体疾患は,発熱や疼痛といった教科書どおりの症状ではなく,「食べない」「動かない」「急に不穏になった」など,生活機能のあいまいな変化として表れます。これを単なる精神症状の悪化や加齢のせいと片づけずに,薬物有害事象や処方カスケードの可能性まで視野に入れてアプローチすることが重要です。
 その鍵を握るのが,単回の検査値にとらわれない「ベースライン(その人の普段の状態)」の把握です。日々の食事,排泄,睡眠,活動の変化を「点」ではなく「線」として統合し,処方変更の時期と照らし合わせることで,隠れた疾患のSOSが見えてきます。
 いつから,何が,どのように変わったのか。患者を主語にした具体的な事実を多職種へつなぐことこそが,命を救うセーフティネットになります。日々もっとも近くで生活に寄り添う看護師の「いつもと違う」という直感を,たしかなアセスメントへと高める一助となれば幸いです。